イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
アディにからかわれたクレムは、気まずそうに視線を泳がせた。

「今日、兄上が帰ってくるんだよ」

「お兄様って……確か、王宮に勤めていらっしゃるって言ってた?」

「ああ。最近、王宮の友人とかも連れて頻繁に帰ってきてくれるんだ。もしかしたら、ロザーナの支部に配置換えになるのかもしれない」

 クレムは、年の離れた兄が大好きだった。その兄が首都キノリアにある王宮に務めているのが、彼の自慢だ。アディは、会ったこともないその兄の話を、いつも得意げに聞かされていた。

 なかなか会えなかった兄が地元に勤めるとなれば、クレムもさぞ嬉しいことだろう。

 だが、アディは別のことが気になった。

「王太子殿下のご様子は、どうなの?」
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