イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「俺は金持ちだしいつでも買えるから、気にするな」

「失礼ね。私だって王宮にさえあがればビスコティだっていくらでも……」

 うっかりと言いかけて、アディは口を閉じた。だが、クレムはしっかりその言葉を聞きとってしまったようだ。

「王宮? こないだから勤め先がどうとか言ってたけど、お前まさか、王宮に行くつもりだったのか?」

「あ……うん、まだ決まったわけじゃないんだけど……」

 アディがごまかそうとすると、クレムは体を起こしてアディの正面に向いた。

「バカだな。やめとけよ」

「なんで?」

「王宮なんて、俺んちみたいな貴族でもなければ勤めることなんかできないんだぞ。だいたい、お前みたいなおてんばが王宮のメイドなんてつとまるもんか。ただでさえごたごたしている時なんだから、ごろつき相手に飛び蹴りするような女、王宮の方からお断りだろ」
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