イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
真っ赤な顔で固まっていたエレオノーラは、長い沈黙のあとで震えながら言った。

「……それほど頼むなら、あ、あなたの妻になってさしあげてもよろしくてよ……?」

「ありがたい」

 するとブライアンは、ひょい、とエレオノーラの体を両手で抱き上げた。

「ちょ……!」

「執事殿、エレオノーラ・メイスフィールは、今このときを持って王宮を辞することを殿下にお伝えいただきたい」

「承知いたしました。どうぞ、お幸せに」

 黙ってその様子を見守っていたルースは、軽く頭を下げた。

 ブライアンは、まだごちゃごちゃ言っているエレオノーラを抱えて部屋を出て行ってしまう。

 残されたアディとポーレットは、唖然としたままその姿を見送った。
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