イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
エレオノーラのような華やかさはないが、物静かなポーレットは博学で度胸もある。およそ考えられる王妃として相応しい雰囲気というものを、彼女はしっかりと備えているようにアディには思えた。

「ポーレットなら、私も祝福するわ。私に姉はいないけど、ポーレットみたいな人がお姉さんだったら、すごく嬉しいと思うもの」

「アデライードは、王太子妃になりたくないの?」

 ポーレットは穏やかな顔で聞いた。

「そうね。なりたいことはなりたいけど……ポーレットより自分の方がふさわしい、と今は思えないかしら。ポーレットはやっぱり、王太子妃になりたいの?」

「ええ。そのためにここにいるんですもの。アデライードには申し訳ないけど、負けたくないわ」

 そうはっきりと言える強さも、上に立つ者として必要なものだ。
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