イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
ただ、たった一つだけ、王太子妃になる条件があると国王は言っていた。気にしなくていいとルースは言っていたが、それが決定打となることは間違いない。

「条件て、なんなのかしらね」
 首をかしげて言ったアディにしばらく考えてから、ポーレットは言った。
「いっそ、王太子のご寝所に忍び込んで肉体的に籠絡してしまえば条件なんて……」

「ええ?! あの、いくらなんでもそれは……!」

 おっとりとした顔でものすごい発言をしたポーレットに、アディはあわてて言葉を遮る。

「まだ私たちのうちどちらが選ばれるかなんてわからないんだから。あせっちゃだめよ」

「……そうね」

 柔らかい笑顔を浮かべるポーレットの本心がつかめないことに、アディはようやく気づいた。

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