イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
胸の鼓動が速くなる。王太子以外に好意を寄せるなんて、あってはならないことなのだ。それはわかっているが、自分の胸に初めて感じるその熱さの理由を、アディはうすうす理解し始めていた。

「私は……」

「お嬢様……?」

 アディの声に気づいて、スーキーが隣の部屋から顔を出した。眠そうなその顔に、アディはあわてて謝る。

「ごめんなさい。ちょっと寝ぼけたみたい」

「そうですか。落ち着くように、お茶でもいれましょうか?」

「いいえ、大丈夫よ。ありがとう、スーキー」

 なにかあったらお呼びください、と言って、スーキーは自分の部屋へと戻った。
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