イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
夜更けには出歩くな、とルースに言われたことをアディは思い出す。ポーレットのような真面目な女性が、アディのようにしょっちゅう庭に出てるとは思えない。おそらく彼女は、ふらふらしているとあらぬ容疑をかけられて衛兵につかまってしまう、などということは知らないだろう。

 ただでさえ今日の事件で衛兵が多くなっているのだ。エレオノーラの騒ぎで忘れていた恐怖が、またアディの足元に忍び寄る。彼女だって、アディのように狙われないとは限らない。
 ポーレットにあんな思いをさせるわけにはいかない。

「まったく、もう」

 アディはスーキーを起こさないようにそっとベッドを抜けると、ポーレットを捕まえるために扉をあけた。

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