イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる


「どこへ行ったのかしら…」

 ポーレットの歩いていった方向に急いでいたアディは、廊下の角を曲がるポーレットを見つけた。

「ポー……」

 声をかけようとして気づいた。

 この先は、テオフィルス殿下のいる部屋だ。ポーレットが言っていた言葉を思い出す。

『いっそ、王太子のご寝所に忍び込んで肉体的に籠絡してしまえば……』

(ま、まさか……もう行動にうつしたの?!)

 案外と度胸のあるポーレットのことだ。考え付いてしまった案を行動に移すのに、それほど躊躇はしないような気がする。

 案の定、アディが足音を立てずに角を曲がると、ポーレットはテオフィルスの部屋の前にたたずんでいた。そうしてアディが声をかける前に、ポーレットはそうっと部屋に入ってしまった。

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