イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
いつもと様子の違うクレムを、アディはまじまじと見つめた。さっきのごろつきになぐられたことが尾をひいているのか、その目はなんとなく潤んでいる。

 まだ痛いのかしら、とアディが心配になっていると、クレムは彼一番のキメ顔で、熱っぽく囁いた。

「だから、わざわざ王宮になんか勤めるくらいなら、俺の」

「あ、みつけたあ……!」

「クレメント様!」

 呼ばれて、二人は一緒に声のした方を振り向いた。

 そこには、息をきらせながら追い付いてきたスーキーと、同じように走ってくるクレムの執事がいた。
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