イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
ちらりと視線をあげてアディを確認すると、ぎりぎりポーレットの腕をしめあげながらルースが言った。

 うつぶせに押さえつけられたポーレットの顔が青く見えるのは、薄闇のせいだけではないだろう。

 静かに、ルースが続けた。

「あなたが、刺客だったのですね」

「……刺客?」

 何が起こっているかわからないアディは、とまどいながらその様子を見ている。

「ええ。この方は、殿下を狙った刺客だったのです」

「え?!」

 アディは、まじまじとポーレットを見つめる。ポーレットは、うつむいたまま動かない。
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