イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「とにかく! 王宮になんか行くな!」

「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ」

「何でもだ! 王宮のメイドになるくらいなら、俺のよ……じゃなくて、俺が雇ってやる! じゃあな!」

 それだけ言うと、クレムはすたすたと背を向けて歩き出す。アディがその背を見送っていると、数歩いったところでくるりと振り向いた。

「この街から離れるなんて、絶対考えるなよ! わかったな!」

 それだけ言うと、もう後ろも見ずに行ってしまった。執事がそのあとを追う。

 二人が馬車に乗るのを見て、アディもスーキーと家に向かって歩き始めた。

「お嬢様が王宮にあがること、クレメント様にお話されたのですか?」

 歩きながら、スーキーが首をひねる。

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