イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「話したというか……つい口がすべって王宮に行くって、言っちゃったの。私が王宮へ行こうがどうしようが、クレムに反対されるようなことじゃないわよね」

 なぜクレムが反対するのか。その気持ちに気づいているスーキーは、心底彼に同情した。

「きっと、お寂しいのですよ、お嬢様がキリノアに行ってしまわれるのが」

「寂しかったら、早く結婚でもなんでもすればいいのに。彼、あんなんでも結構もてるのよね。なのにいまだに正妻もいないし、内妻ですら一人もいないのよ? もったいないわよね」

 まったくクレムの気持ちに気づいていないアディは、あっけらかんとしたものである。

 妻の他にも女性を娶ることが公に許されているこの国では、正妻はともかく、内妻は若いうちから何人か持つのが普通だった。今年十九歳になったクレムはお年頃ど真ん中なので、もう内妻くらいいてもおかしくはない。
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