イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「改めて自己紹介するね。僕は、フィラント・アクトン。テオフィルス殿下の執事……というか、通常は身代わり役、かな。まあ、つまりは都合よくつかわれている使いっぱしりだね」

「え……え? 殿下の、執事……?」

「そう。それとも、いつもクレムがお世話になっています、の方がいいかな?」

「あ!」

 アクトン。それは、クレムのファミリーネームだ。

「じゃあ、王宮に勤めているクレムのお兄様って……」

「そう。僕だよ。名乗った時にわかるかなー、と思ったんだけど、僕の名前、クレムから聞いていなかったみたいだね」

 にっこりと笑った顔は、言われてみればどことなくクレムの面影がある。初めてフィルに会った時に感じた既視感は、クレムにつながっていたのだ。
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