イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「君のことは、よくクレムから聞いていたんだ。ちゃんと調べるまで、街にいる元気なアディが伯爵令嬢のアデライードだなんて知らなかったけど。クレムもまだ知らないからさ、君がただのメイドとして王宮に来ていると今でも思っている。くれぐれもくれぐれもよろしく、ってそりゃあ強くお願いされたよ」

「クレムが?」

 遠く離れた自分をそこまで心配してくれたのかと、アディは胸が熱くなる。やっぱりクレムはいい友人だと再確認しているアディは、きっと弟の気持ちはアディには届いていないんだろうなあ、とフィルが心の中でしみじみと思っていることには気づかなかった。
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