イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「うん。クレムには悪いけれど、君がテオの妃になってくれて、本当に嬉しいよ。できの悪い弟だけど、これからよろしくね」

 言いながら、フィルはルースの頭をくしゃくしゃとかき回した。

「俺は、お前の弟になった覚えはない」

 フィルの手から逃れたルースは仏頂面になったが、心底嫌がっている様には、アディには見えなかった。

「そうだったの……」

「ほらアディ、これから陛下にお会いするのでしょ? ちゃんと身だしなみを」

 フィルがアディの胸の乱れたリボンを直そうとすると、その手をルースが払った。

「俺がやる。勝手に触るな」
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