イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「私は、別に王太子妃を望んだわけではありませんよ?」

「確か、女官を希望されたのでしたね」

「もしかして、私も王太子暗殺の容疑をかけられていたのでしょうか」

 不安そうに言ったアディを、ルースは目を細めて見つめる。

「最初は、そうでした。モントクローゼス伯爵は、あなたほどではないにしろあまり社交界に頻繁に現れる方ではないので、その娘が急に王宮へ入りたいと言い出したとなれば、当然疑いの目も向くでしょう」

 それを聞いて緊張しているアディの頬に、ルースは片手で触れた。
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