イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
ふてくされたように言ったアディに、ランディはにこりともせずに言った。

「女官じゃない」

「はい?」

「アディが王宮にあがるのは、女官としてじゃないんだ」

「え? じゃ……メイド……として?」

 いつもの口調に戻ったランディに、アディも真顔になる。

 働くことは嫌いじゃない。街中で、ちょっとした手伝いをして賃金を稼ぐことは、すでによくやっている。

 ただ、伯爵令嬢とわかっていてメイドとして雇われることは、さすがに現伯爵である父を馬鹿にした話だ。ありえない。

 複雑になった顔のアディを見て、ランディも複雑な声で言った。

「メイドでもない。……王太子妃だ」
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