イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
アディは父の、そうやっていつものんびりとした性格が好きだった。たとえそののんびりが原因で、二年前に母をなくした時に、一切合切の家財や宝石類をいつの間にか親類縁者に根こそぎ奪われてしまったとしても。あの時自分がもうちょっとしっかりしていたら、今の伯爵家もここまで貧乏ではなかっただろうとアディは今でも悔やんでいる。

 閑話休題。

「そ、そうね。それでお父様……」

「向こうの垣根かい? そうだね。そろそろ緑も増えてきたしあちらも……」

「ではなくて、お父様。私が王太子妃ってどういうことですの?!」

 噛みつくような剣幕で言われて、モントクローゼス伯爵は顔をひきつらせた。

< 34 / 302 >

この作品をシェア

pagetop