極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜
本当は、もっと可愛いげを持ちたい。
セリナさんのような器量は微塵もないのだから、せめて性格くらいは“いい女”でいたい。


だけど──。

「だから、セリナさんの誘いを受けたんですよね?」

この可愛いげのない性格は、そう簡単には直らないらしい。


そんな自分に嫌気が差し、再び嫉妬に包まれた胸の奥がひどく痛んだ。
見つめられたままの顔を逸らすことはできなくて、せめて視線だけでも逃げようと顎を小さく引く。


「……ったく、お前は」


すると、篠原はどこか呆れたようにポツリと呟き、心底苛立ったようにチッと舌打ちをした。


「わかり難いんだよ」

「え……?」

「嫉妬なら、もっとわかりやすい方法で見せろよ」


小首を傾げた私に、彼が深いため息混じりにうなだれる。


「だいたい、セリナに俺を売ったのはお前だろ?」


そのあとで篠原に責任を転嫁されて、思わずムッとした。


「人聞きの悪いこと言わないでください!」

「なにがだよ? セリナに俺を貸してくれって言われて、すんなり了承しただろ」

「あんなの、了承って言いませんよ! それに、ただの担当者の私が断れるわけがないじゃないですか!」

「バカか、お前は」


正論で返した私に、彼が大きなため息をついた。

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