極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜【コミカライズ配信中】
きっかけは、話の流れで雛子に恋人ができたと知った時のこと。


なぜか彼女には、恋人なんて無縁な存在だと思っていたから、普段はあまり表情が変わらない顔に照れ臭そうな微笑を浮かべられて……。強引に訊き出したその男の話に、みるみるうちに嫌悪感を抱いた自分自身に気づいた。


同時に、その感情の出所が嫉妬だと悟り、激しい自己嫌悪に陥った。


こんな地味で堅物な女を、いつの間にか好きになってしまっていたなんて。
融通が利かなくて可愛げのない女に、惚れてしまっていたなんて。


自覚とともに訪れたのは複雑な感情だったけれど、認めてしまうまでに時間はかからなくて、そのうちどこか開き直りにも似た気持ちも芽生えていた。
そして、開き直ってしまえば意外とラクで、いっそのこと雛子との時間を利用して、その男から彼女を奪ってやろうかとすら思っていた。


それなのに……。
男の存在がほんの少しでも雛子から見えるとひどく苛立って、彼女の顔を見る度に悪態しかつけなくなっていった。


そのせいで、雛子に無理難題を押しつけてしまっていたことは、未だに後悔しているけれど……。そういう時には、あの日々のおかげで今があるのだと都合良く最低な考えを頭の中で呟き、自己完結することにしている。


もちろん、彼女には絶対に言えないけれど。

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