極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜【コミカライズ配信中】
意地っ張りなのはお互いさまで、不器用なところも笑えるくらいによく似ている。
肝心な時に口を開けば悪態が出るのもふたりして相変わらずで、そのせいで大切なシーンもいつも小説のようには決まらない。


だけど……俺たちらしいな、と苦笑せずにはいられなかった。


出せばヒット間違いなし、なんて言われている小説家、篠原櫂。
その本人の恋愛は、好きな女ひとりに振り回されているなんて誰が想像するだろうか。


こんな姿は誰にも見せられないな、と心の中でごちると、瞳を僅かに伏せたままの雛子も微かに苦笑を漏らした。
直後、胸の奥を掴まれたような感覚を抱き、考えるよりも早く彼女の顎を掬った。


「返事は?」


雛子の瞳が、小さく揺れる。
指先から伝わる彼女の体温に、自身の体の奥底から熱が込み上げ、掴まれたままの胸の奥をチリチリと焦がすような気がした。


「私……」


静かな部屋に落ちるのは、緊張からか震えている声。
だけど、雛子のものならそんな声音ですら耳心地が好くて、もっと聞いていたくなる。


「あの夜のことは、人生最大の失態だと思っていたんです。だから、龍司さんと付き合うことも結婚も、絶対にありえないと思っていました」


それなのに、続けて彼女の口から零されたのは、可愛げのない言葉だった。

< 129 / 134 >

この作品をシェア

pagetop