極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜【コミカライズ配信中】
「それも一緒に渡せば、あの編集長も嫌味なんて言わないだろ」
たしかに、“篠原の新作”と言えば、間違いなく編集長は機嫌を良くするだろう。
だけど、前の担当者から聞いた話を含め、私が知る限り、篠原は今まで自分から新作の話を持ち出したことはない。
原稿を出し渋っていたのは私への嫌がらせだったに違いないとは言え、彼はいつも、次々と新作の話を持ちかける編集長に不満を抱いているから。
それなのに、今回はいったいどんな心境の変化があったのだろう。まださっきの気まずさが残っていたけれど、その理由を訊かずにはいられなかった。
「あの、先生……」
「ん?」
「どうして、急に新作の話なんて……。私が担当になる前から、『先生は自分から新作の話はしたことがない』って、先輩が……」
「あぁ、まぁな」
「……じゃあ、どうして?」
不思議に思いながら篠原を見つめていると、彼が柔らかく微笑んだ。
その瞬間、不覚にも胸の奥が高鳴った私を余所に、篠原は口元に笑みを浮かべたまま続けた。
「ヒロインのモデルにしたい女がいるから」
愛おしさを込めた瞳で告げられた彼の答えに、言葉にできないような感情がグッと込み上げてくる。同時に、なぜか胸の奥がチクリと痛んだ。
たしかに、“篠原の新作”と言えば、間違いなく編集長は機嫌を良くするだろう。
だけど、前の担当者から聞いた話を含め、私が知る限り、篠原は今まで自分から新作の話を持ち出したことはない。
原稿を出し渋っていたのは私への嫌がらせだったに違いないとは言え、彼はいつも、次々と新作の話を持ちかける編集長に不満を抱いているから。
それなのに、今回はいったいどんな心境の変化があったのだろう。まださっきの気まずさが残っていたけれど、その理由を訊かずにはいられなかった。
「あの、先生……」
「ん?」
「どうして、急に新作の話なんて……。私が担当になる前から、『先生は自分から新作の話はしたことがない』って、先輩が……」
「あぁ、まぁな」
「……じゃあ、どうして?」
不思議に思いながら篠原を見つめていると、彼が柔らかく微笑んだ。
その瞬間、不覚にも胸の奥が高鳴った私を余所に、篠原は口元に笑みを浮かべたまま続けた。
「ヒロインのモデルにしたい女がいるから」
愛おしさを込めた瞳で告げられた彼の答えに、言葉にできないような感情がグッと込み上げてくる。同時に、なぜか胸の奥がチクリと痛んだ。