極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜【コミカライズ配信中】
「雛子」


ドキリ、心臓が跳ね上がる。
不意打ちで名前を呼び捨てにするなんて、ずるいと思う。


「なぁ、雛子」


そんな私の心の中を見透かすように、篠原は耳元で低く囁いた。


いよいよ、本格的に心臓が騒ぎ出す。
それに呼応するかのように、胸の奥がキュンキュンと鳴き始めた。


そして、そんな私に、彼がとどめの一言を落とした。


「俺を好きになれよ」


耳元で囁かれた、誘惑を孕んだ甘い声。


「……っ!」


そこに与えられた熱のせいで一瞬で熱くなった体が、不本意にも固まってしまった。


「雛子……」


さっきの情事を思い出させるような、低くて甘い声音。
“雛子”なんて、今日まで一度も呼んだことがなかったくせに。


ずるい……。


私は体が震えそうになるのを堪えて、必死に口を開いた。


「かっ、からかわないでくださいっ……!」


だけど、私が平静を装えないほどパニックになっていることを、篠原はきっとわかっている。


「俺は……」


だから──。

「お前が、俺のことを好きになり始めてると思うけど」

私の心と体の芯を溶かしてしまうようなひどく甘い声で、そんな囁きをそっと落としたんだろう。

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