極上ショコラ〜恋愛小説家の密やかな盲愛〜【コミカライズ配信中】
「先生の作品が映画化したんですから、今回だけは先生にも出席していただきたいんです」


今回ばかりは、篠原にもパーティーに参加してもらう必要がある。


彼が三年ほど前に書いた【ノクターン】という作品が、満を持して映画化となったのだ。
映画化が決まってから監督とスポンサーの間でトラブルが起き、一時は公開が見送りになるかもしれないという懸念まで生まれたものの、一ヶ月前に無事に公開された。


主演は、男女問わずに知名度の高い人気女優のセリナ。
現在までの観客動員数も興行収入も申し分なく、専門家の間では今年の興行収入の上位を争うヒット作になる見込みだと話題になっている。


「パーティー会場のホテルの部屋を押さえてありますので、そのままお泊まりになっていただけますから」


再び頭を下げた私の頭上から、深いため息が降ってきた。


篠原ほどの作家ならあえてメディアに露出する必要はないけれど、原作者が祝宴に出ないというのは些か問題なのだ。
ましてや、主演女優が彼の出席を熱望しているとなれば、社長や編集長が今後の利害関係を懸念するのも無理はない。


できることなら、篠原の意思を汲みたいと思うけれど……。私には彼の意向を尊重できるような力なんてないから、残念ながら上司に言われた通りにするしかない。

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