旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「宝来部長、あちらにお客様が……」

 私が目配せした方に視線を流し、成暁さんは「ああ」と頷く。

「そろそろ失礼させていただきますね。」

「あ、はいっ。あ!」

 ゆみかは突然私に振り向く。

「香澄ちゃん携帯の番号変わった?」

「ううん」

「そっか! じゃあ連絡するからよろしくね! 宝来さんまたお会いしましょうねっ」

 早口に言って背を向けたゆみかを、慌てて追いかける祥子が振り返って手を振る。

「香澄ちゃん! またね!」

 邪気のない祥子の柔らかな笑顔に救われて、私も笑顔で手を振り返すことができた。

 どっと疲れがのしかかる。周りの目がなければ今すぐにでもこの場にしゃがみ込みたい。

「お忙しいところ引きとめてすみませんでした」

 頭を下げる。

「いや、それは構わないけど」

「あの、お客様が」

「別に俺が対応しなくちゃいけないわけでもない」

 だったらさっきのは、空気を読んであの場を切り上げようとしてくれたのかな。だとしたら変な気を使わせてしまって申し訳ないことをしてしまった。
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