旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「ひとりで帰れます。宝来部長は戻ってください」

「嫌だよ。香澄とふたりきりになれるチャンスなのに」

 なにをふざけたことを言ってるの。

 眉間に皺を寄せる。

「そんな顔するなよ。香澄が慣れない仕事を頑張ってくれたのは皆理解しているし、まだ初日だから大事を取ってほしいって言ってるんだ」

 皆の方がよっぽど頑張っているのに。……だから共同作業は苦手なんだ。私のせいで皆に迷惑がかかる。

 結局、引き下がらない成暁さんに送ってもらうことになってしまった。


 馴染みつつある革のシートに背中を預けて息をつく。ひとまず、いつも持ち歩いている鎮静剤は飲んでおいた。

 両親を亡くしてからしばらくは、電車やバスに乗ると必ずパニック障害を引き起こしていた。もちろん車も。

 カウンセリングも何度も重ねたし、もう治っていたと思っていたけど、やっぱり完全に元通りというわけにはいかないのかな。

 会場を出たばかりの頃はまだ少し明るさを残していた空は、いつの間にか夜の暗さに変化している。

「さっきの、本当に友達?」

 聞かれて、先程のゆみかの顔を思い出す。
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