旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~
「それじゃあまた」

 長谷川さんが帰ろうとしたその時だった。

 部屋の扉をドンドンドンッと激しく叩く音と共に、「香澄!」と叫ぶ成暁さんの声が響いた。

 静寂を切り裂いたその騒音に、私と長谷川さんは揃って驚きの声を上げる。

 寿命が縮まったかと思った……。

 長谷川さんは胸に手を当て、「ビックリしたー」と笑う。その間も、成暁さんの叫びに近い呼びかけは続いている。

 長谷川さんがのんびりとした動作で扉を開けると、肩で息をつき、かなり取り乱した様子の成暁さんが転がり込んできた。

 私の姿を目に留めると、「無事か……?」と不安そうに眉を下げる。

 もしかして長谷川さん、部屋番号以外にも余計なことを伝えたのでは。

 長谷川さんは成暁さんの肩に手を置いて苦笑した。

「早かったなぁ。もう少し遅かったら、吉岡ちゃんを美味しく頂くところだったのに」

 嘘ばっかり。わざと成暁さんを煽る姿にハラハラする。しかし、そこは長年の付き合いがものをいうのか、嘘を見破ったらしい成暁さんは大きく息をついた。

「勘弁してくれよ」

 乱れた髪をなでつける成暁さんの仕草が色っぽくてドキドキする。

 私の視線に気づいた成暁さんがこちらに顔を向けた。目が合うと心臓がドクンッと高鳴る。
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