旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 だとしても――。

「やっぱり今から……」

「そんなこと言わずに、準備しましょうよ」

 香澄は上半身を起こし、なだめるように俺の頭を撫でた。暇さえあれば香澄の頭を撫でているので、最近では俺の癖が移りつつあるようだ。

 諦めるしかないか……。

 香澄の腰に腕を巻き付ける。

「今日は絶対にするから」

 まだ未練はあるけれど、香澄がやる気でないのなら仕方がない。

 返事がないので様子を窺うと、香澄は照れた様子で唇を真っ直ぐに結び、こくこくと何度も頷いた。

 そんな可愛い反応をされたらやっぱり離したくない。更に力を込めて抱きしめると、香澄が焦った声を出す。

「成暁さん! 早く出掛けたら、その分夜はゆっくりできますよ!」

 なるほど。この発言を後で後悔させてやろう。

「分かった」

 不敵に笑うと、香澄は自身の発言の重さを今理解したのか、布団に顔を埋めて悶絶していた。
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