旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~

 香澄の不安げな視線が痛いくらい突き刺さる。

 そんなに心配しなくても、香澄がくれるものなら例え商品券であっても俺は馬鹿みたいに喜ぶのに。

 出てきたのは、イタリアで生まれたウールとカシミアのブランドで、最高品質の製品を生み出す有名ブランドのマフラーだった。

 ちょうど気になっていたものなので驚く。

「大人の男性が身に付けてもおかしくないものって、なにか分からなくて。長谷川さんがここのブランドを教えてくれて、頑張って選んだつもりなんですけど」

 香澄の声がどんどん尻すぼみになっていく。

「気に入らなかったら、質屋に入れて、そのお金でなにか……」

 とんでもないことを言う香澄を抱きしめた。

「ありがとう。嬉しいよ」

 香澄は安心したらしく、肩からふっと力を抜く。

 もっと気負わないでいてくれたらいいのに。

 彼女の安らげる相手として存在していたいのに、そうなるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
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