旦那様は溺愛至上主義~一途な御曹司に愛でられてます~


 貰ったマフラーを巻いて、今日はヨーロッパの冬の風物詩と呼ばれている、ドイツのフランクフルトで始まった本場さながらの雰囲気を持つ、クリスマスマーケットに足を運んだ。

 クリスマスマーケットは光り輝くイルミネーションを始め、ドイツから輸入した雑貨品から食品まで様々なものが売られている。

 本物のモミの木を使用したツリーがあり、クリスマス音楽の生演奏も行われ、例年多くの客で賑わいを見せている。

「はぐれるなよ」

 隣で俺に寄り添う香澄に声をかける。すると、繋いでいた手を解き、俺の腕に絡めてきた。

「こっちにします」

 へへっと子供のように笑う顔に、胸が鷲掴みされて苦しい。

 俺の苦悩など露知らずの香澄は、俺を見上げてはにかむ。

「あの、温めたワインでしたっけ? 飲んでみたいです」

「グリューワインか」

「そう、それです」

 香澄はあまり酒に強くない。昼間からアルコール度数の高いワインはあまり飲ませたくないのだが……。

 香澄の楽しそうな表情を見ていたら、まあいいかと思い直した。

 飲みきれるか怪しいので、ふたりで一つ注文する。四人掛けのベンチに座り、まずは俺からグラスに口をつけた。

 これはキツイな。温めてあることで尚更アルコールが強く感じる。
< 174 / 180 >

この作品をシェア

pagetop