一期一会
『それとも名前、わかんない?』

「知ってるよ!?智也――――」


口に出してから彼の魂胆に気付いたが、名前を言ってしまったことに恥ずかしくなり、最後の『や』の口の形のまま固まってしまった。

顔の温度が一気に上がっていくのを感じる。
耳まで熱い。


『うん。正解』

満足そうな彼の声が聞こえた。

「誘導尋問みたいだった……」

『ハハッ』

「私だけ言わせるなんて卑怯……」

私はボソッと呟いた。

『ん?』

彼には私の言葉は届かなかったようだ。

私だけドキドキさせて卑怯だ。

「じゃあ中原君は私の名前わかるの?」

『瑞季』


即答ですかっ!!!!!


ヤバイ……

鼻血が出そうなくらいの破壊力……。


電話で話しているから耳元で囁かれたみたいで、悶えそうなくらい、ヤバイ。
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