一期一会
「あの黒のスラックス履いてる人、格好良くない?」

見たこともない不思議な魚を眺めていると、後ろからふと聞こえてきた声に固まってしまった。


黒のスラックス。
中原君、履いていたなって。


「背高いし、顔もイケメーン」

先程とは違う声。
きっと問いかけられた隣にいる子だろう。
そしてイケメンのワードに確実に中原君だと確信した。


「隣にいるの彼女かな~」

「じゃない?二人だし」


か、かのじょ!?


違いますよっ!!


「羨ましい~」

だから、違いますって!


でも、二人で居ると、そういう風に私達は見えるのかな……。


私は隣にいる中原君を見上げた。
彼は周りの声には気付かずにガラスの向こうの深海魚を夢中で見ていた。
< 179 / 302 >

この作品をシェア

pagetop