一期一会
「先生目当てで入ってる子が沢山いるから、かなり作品あるね」

紘子が見渡しながら言った。


「先生居ないな……残念」

教室を見渡し目当ての人物が見つからなかった成実はしょげていた。


私が絵を観始めると二人も後に続いた。
二人は絵に興味が無いらしく、すぐに私を追い抜かしてスタスタと歩いていく。

私は一つ一つ、じっくりと観察するように観ることにした。




ふと横に目をやると次の作品は無かった。
これで終わりか、と思い辺りを見渡すと中には誰も居なかった。

成実と紘子は……?


慌てて教室を出ると二人は壁に持たれて待っていてくれた。


「ごめん、見入ってた!」

「邪魔しちゃいけないと思って外に出てたよ」
「ゆっくり見れた?」

良かった。
二人とも待たせてしまったのに怒ってなくて。


「瑞季は絵が好きだねぇ。そんなに好きなら美術部入れば良いのに」

成実が言った。

「好きだけど部活に入るまではなあって」

「確かに、毎日出るの面倒だしね」


ピンポンパンポン。


『まもなく校庭にて文化祭閉会式を行います。皆さん校庭に集まって下さい』


文化祭の終わりを告げるアナウンスが流れた。


「あー、文化祭ももう終わりか~。なんか呆気なく終わっちゃったな」

「そうだね」


本当に全てが呆気ない。


中原君が居ないだけでこんなに虚しい。

学園祭の準備をしたり、校内を回ったり、彼と一緒に楽しみたかった。


自分から話し掛けるなと言って遠ざけたのに……。


また彼と話したい。


私のことを何とも想ってくれていなくても……。


なんて、勝手なことばかり考えている。
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