ずっと前から好きだから
「もう1回する?」


「ば、バカ!」



あたしの顔を覗き込んできた匠を直視できずに、すぐに逸らした。



「そんな逸らされると傷つくなぁー」



呑気にそんなことを言っていて、ドキドキしているのは自分だけみたいで悔しくなる。



「うるさい、しばらく話かけてこないでよ」



ゆっくり考える時間が必要だった。
だって、こんなこと未知の世界すぎて。



「嫌だ、話しかける」



後ろからあたしの腕を掴んで、自分の方に向かせる。



「だから、話しかけないでって……「嫌だったなら謝るから、だから俺を無視しないで」


「……っ」



どこぞの王様だぐらいな顔をしてると思った匠の顔は、想像よりもずっと傷ついたような顔をしていて、言葉を失う。



「夏実が俺に笑ってくれなくなるの嫌だ」


「そんな……」


「頼むから、俺のこと嫌いにならないで」


「嫌いなんかじゃないよ……」



なんで、そんな顔するのよ。
あたしに嫌われたらこの世の終わりみたいな。

そんなの、怒れなくなっちゃうじゃない。

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