極上御曹司の愛妻に永久指名されました

電話を切ってカフェに行けば、窓際の席に座っていた姉が私に向かって右手を大きく振る。
「紫〜！」
今日の姉は全身黒コーデ。
ブラックの薄手のニットのワンピースにブラックのパンツを合わせている。
スタイルもよくて美人だから、とてもクールに見える。
でも、手首に傷があるのが気になった。
鋭利な刃物で切ったような痕。
あんな傷あったっけ？
その傷をじっと見ていたら、姉が珍しくハッとした顔になり、サッと傷を隠した。
「早かったわね」
「うん、会社出たところで電話もらったから。で、なに食べに行くの？」
姉に尋ねれば、彼女は席から立ち上がった。
「高級イタリアンとかどう？」
「普通にパスタ屋でいいけど」
姉と高級料理を食べるのは怖い。
カフェを出て姉とタクシーに乗って向かった先は、日比谷にある超有名ホテル。
実は今日の恭一の会食場所もここなのだ。
「ねえ、やっぱりこんな高いとこじゃなくてもっとカジュアルなとこでいいよ」
恭一と鉢合わせするのが嫌で姉にそう主張するも、彼女は応じない。
「ダーメ。カジュアルなところって狭いじゃないの」