極上御曹司の愛妻に永久指名されました
高層ビルが夕焼け色に染まって綺麗だ。
「……り、紫、適当に注文するわよ」
姉に呼ばれてハッとする。
「ああ……うん」
曖昧に答えて、テーブルの上で手を組んだ。
タクシーの中でもそうだったけど、姉とふたりになると何を話していいのかわからない。
姉が店員を呼んで注文を頼むと、少し緊張を解きたくて、テーブルに置かれた水を口に含んだ。
姉とふたりきりになり、気づまりを覚える。
「紫の恋人ってあんたの会社の副社長で御曹司なんでしょう?いいの捕まえたわね」
姉が脚を組んで私を見据える。
「たまたま彼が友達の従兄だっただけ」
あまり恭一のことは話したくなくて、素っ気なく返した。
「たまたま……ね。それであの大企業の風間コーポレーションの御曹司を捕まえちゃうんだから凄いわよね」
姉の目が妖しく光る。
この目は……私のことをよくは思っていない。
妹だからよくわかる。
< 207 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop