Snow Doll ~離れていても君を~
いつだったか私とケイの前に現れた男達とは、また違う気がした。
鋭い瞳の奥に強い意志が見え、余裕が窺えた。
照明にさらされた髪は、この辺りではあまり見たことのない、銀と灰の混じった神秘的な色。
「この前は、俺の部下が勝手なことをして済まなかった」
私の顎をすくい、男が謝罪の言葉を口にする。
「無理やり連れ去るなど、卑怯な真似だったな」
「……どうして私を?」
捕らわれた顎を気にしながらも、私は小さく問いかけた。
私を手に入れて、何のメリットがあるのか不思議だ。
一応、如月先輩の彼女ということになっているから、人質にでもしようというのか。
「どうして、だと?」
急に憎らしげにすがめられた目が、一瞬誰かと似ていて体が強張る。
肩を強くつかまれ、その下の古傷が痛んだ。
「あいつの大事にする──本気で好きな女を、見ておこうと思ってな」
あいつ……?
誰のことだろう。
「このまま蒼生に来ないか? すぐ近くに椿高もあるから不便はないと思うが」
逃げたいのに、肩をつかむ力が強すぎて振り払えない。
えぐるような視線が怖くて目を合わせられない。
「影島、やめろ。優希奈に触れるな」
ふっと体が解放されたかと思うと、私は黒いコートの人に抱き寄せられていた。
「お兄ちゃん……!」
やっぱり、さっき見かけた人影は兄だった。
灰色の髪の男は舌打ちをすると、身を翻し駐車場の方へ遠ざかって行った。