Snow Doll ~離れていても君を~

「怖かった……」


思わず、そばにある兄の腕にしがみつく。


「ごめん、怖い思いさせたな」

「さっきの人、誰? 蒼生高の一番悪い人?」

「悪い人……」


兄は苦笑いを浮かべ、私の無事を確かめるように頬に触れた。


「大丈夫、今度優希奈に何かあったら絶対助けに行くから」


私の目を真っ直ぐに見て、兄は約束をした。


「……お兄ちゃんは、あの人の仲間じゃないよね?」

「仲間なんかじゃないよ。俺は一応、蒼生高の生徒会長だし」

「そうだよね」


兄とは親の再婚で中学のときに初めて出会い、その頃から絵に書いたような優等生だった。成績は常にトップクラス。

風紀委員のはずの如月先輩とは違って、煙草の匂いをさせていることもなかった。


思えば海里も同じで、煙草の匂いを感じたことがない。
髪も染めていないし、意外と真面目なところもあるのかもしれない。



「そういえば」と兄は鞄の中から何かを取り出した。

「これ、父さんが優希奈にって。このぐらいあれば、しばらく生活できると思う」


手渡されたそれは私名義の通帳とキャッシュカードが入った袋だった。

父も家出を認めてくれたということだろうか。


「優希奈。桜花の如月と付き合ってるって本当なのか?」
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