Snow Doll ~離れていても君を~
「どうしてお兄ちゃんが知ってるの? 蒼生高までそんな噂が広まってるなんて」
「いつだったか、さっきの男……影島から聞いた」
そういえば以前、蒼生高の人達が私の前に現れたことがあるのだから、噂が兄の元まで届いていてもおかしくはない。
「あのね、本当に付き合ってるわけじゃないから安心して? 一応、彼女の立場にあるみたいなんだけど、先輩とは何もないから」
「……」
強張っていた兄の表情がふっと緩む。
「何もないなら、とりあえず安心だな。あとは、誰かにさらわれないかが心配だ」
そう言って兄は私の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんは相変わらず心配症だよね」
「そうかな……」
柔らかく微笑んだ兄は、突然私を引き寄せ、強く抱きしめてくる。
「どうしたの……?」
兄の服から懐かしい香りがする。
清潔感のある石鹸の香り。
今日は底が厚めのブーツだったから、いつもと違う感じ。
身長差が少なくなって、胸元ではなく肩口に顔をうずめる形になっている。
しばらくして兄の肩越しに人影が見えた瞬間、私は目を見開いた。
それは海里や如月先輩達の姿だった。
その後ろにはケイや春馬君もいる。
兄はすばやく私を解放すると、
「次は本当に迎えに行くから」
そう耳元で囁き、海里達とは逆の方向に姿を消した。