Snow Doll ~離れていても君を~
「急に手を繋いできたり……思わせぶりな態度を取ってくるんだけど、本音が全然見えないの」
「思わせぶり……、ずるいことしてくるのね、彼」
艶のある赤い唇を歪めたケイは、大人びた視線で私の瞳を見つめる。
「気持ちを聞いてみたいけど、聞けなくて。うっかり、私から“好き”なんて言って気まずくなるのも嫌だし。どうしたらいいか迷ってるの」
実は『好みじゃない』とか冷たくあしらわれたら。ショックで立ち直れない。
「好きって……いつ、どのタイミングで言うんだろう」
「難しいよね。この前みたいに、ユキより先に彼へ気持ちを伝える子も出てくるかもしれないし」
そうだった……。
好きと言えなくてウジウジしている隙に、他の子に持って行かれる可能性もある。
「人によって違うと思うけど。想いが溢れたときでいいんじゃない?」
想いが溢れたとき……。
優しく微笑んだケイは、仕上げに淡いピンク色のリップグロスを塗った。
リップブラシではなく、薬指で。
唇に触れた指先に一瞬ドキリとするけれど、心は女の子のはずだし、と何でもないことのように思い込む。
「──慶蔵」
突然、ドアが開く音とともに、海里が教室に入ってきた。