Snow Doll ~離れていても君を~
彼が一歩近づき、私の背が冷たい廊下の壁に当たる。
「それは……」
「ほら、いないんでしょ彼氏なんて。俺、諦めないからね」
「──優希奈」
廊下の向こうから突然放たれた声は、私の大切な人のものだった。
「海里……」
こちらに視線を向ける彼は、冷え切った目つきをしている上に、不機嫌そうに唇の端を歪めている。
「えっ。まさか、佐々木海里と付き合ってるの!?」
一気に青ざめた彼は「ご、ごめんね、邪魔して」などと早口で言いながら逃げるように立ち去った。
憮然としてこちらへ歩いてきた海里は私を冷たく見下ろす。
「どうして、最初から俺と付き合っていると言わなかった?」
「だって……」
「俺との関係を隠したいのか?」
「違うよ、隠したいのは海里の方でしょ?」
「……は?」
私の反論を聞いて、海里は呆れた表情をする。
「私はもっと一緒にいたいのに。海里は私のこと、もう飽きたの? 好きじゃなくなったの?」
「……優希奈。ちょっと来い」
急に手首を引かれ、私は部室の方へ連れて行かれた。