君影草は誠を乞う

「あら、ここじゃ見かけない顔だね。」

朝を迎え、
活気づき始めた町を歩いていると、
突然、
後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには、
少しふくよかな中年の女性がいた。
どうやら彼女が声の主のようだ。

「旅の人って感じでもないけど…。
あっ、あたしは菊。
旦那と娘でそこの甘味屋をやっているんだ。」

お菊さんが指を指した先には、
赤い暖簾がかけられた店があった。
[丸菊]と大きく書かれた看板から、
店の名前が分かり、
彼女と旦那さんの仲のいいことが伝わったきた。
< 23 / 74 >

この作品をシェア

pagetop