perverse
私は取りあえず背を向ける
翔は私とは気づかず

「お客さんだったんだ、ゴメン」
「翔、紹介するわ」

振り返るとニンマリしたお母さん
お母さん、何言ってるのですか?
叫びたい!

その言葉で翔は私の方を見た
私は怖かったけど、ゆっくり翔の方に視線を移す

そこには私の姿を見て、ボーゼンと立っている翔の姿
その背後に、駆けつけてきた宙さんがいる

「こちらは、宙の婚約者の美波さん」

と白々しく私を紹介するお母さん。私もそれにつられて

「はじめまして。佐藤です」
と挨拶する。

翔の背後にいる宙さんは、笑いをこらえるのに必死な顔をしてた。

4年振りに見る翔。あの時と比べると確実に太っている
嫁と子供が太めだから、たぶん食生活がそうなったのかもしれない
今、ここにいる翔はあの時の私の好きだった翔の容姿とは随分違っていた

年相応に年を重ねているのは認めるけど

宙さんが『あの時の翔はいない』って言ったのは、容姿のことなのだろうか?それとも違う意味なのか今の私にはわからない

翔はずっと私を見ていて、動かない
彼にとっても衝撃的だったに違いない。私も反対の立場だったら、きっとそうなるだろう

「ご飯は、今から作るわ」
お母さんが話を変えようとするが、翔は動かない
動いたかと思うと、私の腕を掴んだ
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