perverse
そんな私を見透かされるように『想定内だから』ってケロッて言う宙さん。私はあなたの手のひらで転がされている状態ですか?

って思うけど、涙を浮かべるなんてしていけないことだと思う。申し訳ない気分になり「ごめんなさい」って謝り、宙さんの胸に顔を埋める。私って本当にズルい女。

コンコン
ドアをノックする音
私はお母さんがお茶を持ってきてくれたと思ったけど

「俺」

って聞こえる声に胸がドキドキしている。
私から両腕を離し面倒くさそうにドアに向かう宙さん

ドアを開け『何?』って冷たい声で言うと

「真寛に聞かれるとマズイから、部屋に入れてくれない?」
『嫁にばれたらいけないことがあるんだ』

宙さんは下に聞こえるぐらい大きな声で棒読みで言う。絶対意地悪。でも私を守るためっていう事も痛いほどわかる

「どうでもいいから。美波に会わしてくれ」

それとは対照的に小さな声で言う翔に、不機嫌そうな宙さん

『お前は、俺の婚約者の名前を呼び捨てにするんだ?おかしいだろう?』

「兄ちゃん嫌がらせか?」
『何で俺がそんなことをするんだ?何のメリットもないのに。お前こそ何もわかってない。お前は妻帯者だ。子供もいる。そんなお前が、俺の婚約者に色目を使うのはおかしいだろう?』

冷めた、厳しい声で諭すように言った
二人が言い争っている姿を遠目で見ていて私はどうしたらいいんだろう?と思う

私は宙さんと結婚する。宙さんが言う通り私は彼の婚約者。翔は…元彼とはいえ、これからは義弟になる。私はこれから義理の姉として付き合わなければいけない。

だから、今、宙さんが翔に行っている事は間違いじゃなく正解

キッチリ境界線を引いている

たぶんこれは翔に言っているけど、私への戒めだと思う。思いたい

私は考える前に、身体が勝手に動いた

ドアの向こうにいる翔の前に立つ

翔が私を見て、私も翔を見る

宙さんは今の私には彼を見る余裕はない

胸の鼓動が高鳴る
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