perverse
この【正解だよ】と悠希さんが口にした意味
その本意はわからないし口止めをされているから確認することもできないけど良い意味で言われたものとは思えない
真寛さんは離婚後、望愛ちゃんとシンガポールに移住し父親の会社の現地の子会社で働いていると翔から聞いた
あの返事の後、離婚協議はスムーズに行われ慰謝料、養育費なしで翔に有利な条件での離婚
真寛さんの抵抗は一切なかったらしい
星野家の皆さんは態度を変えたようにあっさり決まった離婚に唖然としていた
星野のご両親にも離婚の決まる経緯で私が絡んでいるなんて全く知らないし、翔には宙さんも私も守秘義務があるから何も言わないけど、薄々気づいているのかもしれない
翔が私の前にやって来て、優しく私を見つめ涙ぐむ

この涙は、もしかして5年前の事でも思い出した?
もし彼がこの姿を見て手放した事を悔やんでいるのなら、宙さんが私に投げかけた提案は成功となる
結果は私が原因ではないけど、離婚のとどめを刺してしまった
これがプチ復讐の成果だったとは絶対思えない
私のワガママを通しただけのただのエゴ
「美波綺麗だよ。兄ちゃんと結婚しても、いつまでも陰から見守っているから」
前言撤回
絶対、失敗だ
涙でぐちゃぐちゃになっている翔の顔を見たら、そう思った
「もーアンタ花嫁の前で何言ってるのよー」
私達を怪訝そうに見ていた姉が仲に入って来た
「だって・・・おねーさんだってキレイだと思うでしょう?」
「そりゃ思うわよ。自慢の妹なんだから」
「俺、すっげえ後悔してる・・・」
翔が何かを言いかけた時、悠希さんが寄ってきてズルズル部屋の外に連れて行ってしまった
私と姉はその滑稽な後ろ姿を見てクスクス笑う
「さっきも言ったけど貴方は私に取って自慢の妹よ。あまのじゃくなところがあって強がるから器用そうに見えるけど本当は不器用で上手く進めない。たぶんアイツの時なんてそうだったんでしょう?」
姉は付き合いが長い分、何も言わなくてもバレている事が多い
5年前のあの時も、もっと素直になって電話ではなく直接会いに行っていたら確実に何かが変わっていた
< 291 / 294 >

この作品をシェア

pagetop