perverse
宙さんの言葉でやっとご両親は頭を上げ立ち上がる。私はどうしたらいいのかわからず

「すいません」

と言うしかなかった

宙さんは私の肩を抱きポンポンと叩く

お母さんがフッと肩を揺らして口を開いた

「本当はね美波ちゃんが私達の娘になってくれるのはとても嬉しいの。こんな形でも機会を与えてくれている、「このご縁に感謝している。美波ちゃんありがとう」

なんて暖かい言葉なんだろう
私は星野家の嫁には必要のない存在だと思っていたのに

思いがけない言葉に自然と涙がホロリと出た

隣にいた宙さんがハンカチを差しだす

「ケーキ食べようか?」

何事もなかったかのように話を変えてくれた

4年ぶりに口にした手作りのシフォンケーキ
もう二度と食べることはないだろうと思っていたのに・・・本当にこのご縁に感謝したいと私も思った


お茶が終わりお母さんが忙しく動き出す

私は洗い物を台所に持って行った時昼食の用意をしているお母さんに

「手伝います」

今日一番の笑顔で言えたと思う

お母さんは微笑んで

「いいのよ。美波ちゃんはお客さまなんだからゆっくりしていて」

優しい言葉をかけてくれる

「手伝いたいんです」

たぶん宙さんに言われなくても、やったと思う。

先ほどの言葉で、前よりもお母さんのことを好きになった

昔から優しく迎え入れてくれて、そして今日も変わらない

私はこの家族の中に入ってもいいのかも

少し前向きな気持ちになれたような気がする

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