perverse
「イヤにはなっていませんが、不安です」

嘘ではなく本心

実際、翔夫婦と上手くやっていけるなんて思っていない

かといって、私達の関係は2週間余り

まだお互いを理解するだけで精一杯で、信頼関係なんて築けていない

もっと若かったらこの環境でも勢いでいけたかもしれない

今の私は今日聞いた真実と、翔夫婦とのこれからの親戚関係、これだけでも消化しきれない状態

この気持ちが私の【不安】というのはいうまでもなかった

宙さんは私の手を握り抱きしめ

「アイツの話を聞いて不安になって当たり前だよ。いつかは話さないととは思っていたけど、
いざ話してみると、美波を傷つけた。ゴメンね」

抱きしめている両腕の力が入る
痛い・・・思えるぐらい強い

振り払うことができない

「美波、俺はお前がどう思おうと手放さない。絶対守るから・・・幸せにするから・・・」

小さな声で私に囁きかける

私は彼の腕の中でその言葉を聞くだけ


何分経っただろう
私に巻き付いた腕がやっと離れた
そこには不安な顔の宙さん

私のことを思っての表情だということはよくわかる

私はどうしたらいいの?

今なら全部振り払って逃げることはできる

宙さんだけ取って、これから築くであろう翔家族の関係だけを切るという選択肢はない

宙さんもすべてを切っても3週間前の私に戻るだけ

今、その選択肢をえらんだとしても傷は浅い

< 97 / 294 >

この作品をシェア

pagetop