breath
心が弱っている私は、専務の褒めてくれたその一言が嬉しかった

泣きすぎて、カラッカラッに乾いている心に少しだけ潤いが蘇ったようだ

ふと専務のお皿に目を向けると綺麗に完食していた

「専務はハンバーグが好きなんですねー」

皮肉げに言ってみると

「大好物」

って嬉しそうに答える専務の笑顔は無邪気だ

初めて見る彼の表情にドキッと心臓が疼く私

確実に弱っている

気持ちが和んだおかげで、少し勇気が湧いてきて

「樹さんは反省室で何をやっているんですか?」

って聞いてみた。専務は『さあ?』とトボけた表情をする

「反省させられている……くらいしかわからない。ただあの常務の事だから、山奥に閉じ込めて滝行とかやらせていてもおかしくない」

「滝行ですか……」

こんな真冬の滝行なんて……樹さん大丈夫なのかしら……

もしそうであれば、樹さんが私に連絡してこないことも納得できる
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