breath
「専務……私、退職したいのです」

意を決して言う

私はもう樹さんと藤崎のいる、この会社で働くことはできない。周囲が許してくれるとも思えない

ーーーならば、藤崎さんの妊娠が周囲にバレる前に私が身を引けば、事が大きくなることはない

私がひっそり、消えれば……私のプライドも保たれるはず

専務にはバレていないけど、実は私の手はブルブル震えている

すごく、緊張している

「なぜ、望月さんが辞めなければいけないんだ?」

「樹さんと藤崎さんが結婚したら……私が2人を見るのが辛いから」

それもある。でも本当は、私が藤崎さんから樹さんを略奪したと後指をさされるのが嫌だから

実際にはしていないけど、結果を見たらそう思われてもしょうがない現状

私はその環境の中で働くなんて……絶対できないと思った

私の退職理由を聞き専務はフフフッ……と怪しい笑みを浮かべる

「君は、そんなに同情されたいのか?」
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