breath
あれから何分泣いただろうか?

涙が一瞬止まった時、専務の胸から顔を離した

本当はもっと泣いていたかったけど、専務のスケジュールを考えると、私がこれ以上彼の時間を束縛をしてはいけない

「ーーー専務、もう大丈夫……です」

鼻声だけど、泣かないよう精一杯に声を出す

そんな私を専務は心配そうな顔をしながら覗き込む

「大丈夫じゃないだろう?」

私が我慢しているのを見透かすように声をかける

「でも……仕事が……」

そう言いながら専務の身体から離れようとすると、専務の腕に力が入り、ギュッと力強く引き戻される

「辛い時は俺を頼れ」

すごく辛そうな囁くぐらい小さな声で専務は言った

私が欲しい言葉

本当は樹さんに言って欲しかった

樹さんの胸で泣きたかった

樹さんにそばにいて欲しかった

なのに、私がこんなに辛い思いをしているのに……貴方はここにいないのだろう?

もう私の事は忘れたのですか?
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